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二つ目の備忘録

会計税務、読書、旅行など

個人事業と法人成りとどう違うのかシミュレーションしてみた

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よく個人事業のままでいるのと、法人成りするのとどっちが良いのだろうか?という話題になります。

 

これは簡単な答えは無くて、ケースバイケースということになります。事業の内容やその人の置かれた状況によって変わってしまうからです。なので、判断は具体的にシミュレーションしてみて推定するより他ないと思っています。

 

法人になったほうが車とか家賃とかの経費を会社の費用にできてお得という話もありますが、そう簡単な話ではなく、目先のお金だけでなく、いろいろな税金などトータルに見て判断しないと法人成りしてみたものの、かえって損してしまった!ということになりかねません。

 

そこで試しにシミュレーションしてみようということで、例として次のような事業の場合に個人事業の場合と法人成りした場合で納税額がどのように変わるか、見てみたいと思います。あくまで例としてのざっくりの概算ですので、細かい点は気にしていません。

 

事例

業種:内装工事 (埼玉県所沢市

売上:年1500万円 (簡略化のため全額課税売上で毎年同額とする)

従業員:社長(自分)と配偶者の2名のみ

月給:社長30万円、配偶者8万円

自宅兼事務所:家賃10万円(事業按分割合50%)

自家用車:ガソリン代など年14万円(事業按分割合50%)

その他経費:年700万円

扶養対象者:1人(17歳)



個人事業の場合

個人事業の場合、かかってくる税金は社長と配偶者の所得税、事業の消費税、個人住民税、個人事業税です。それぞれの概算値は以下のとおりです。

 

社長の所得税

事業所得=総収入金額ー必要経費=1500 - 1223 = 277万円

 

必要経費の内訳は以下のとおり。家賃や車の費用は事業割合分しか経費に計上できません。また、配偶者の給与は青色事業専従者給与とする(このため配偶者控除配偶者特別控除は受けられない)

 

必要経費=給与(30+8)x12 + 家賃 10 x 50% x 12 + 車 14 x 50% + 他700=1223万円

 

したがって、課税される所得金額=事業所得 - 青色申告特別控除 65万円 - 基礎控除38万円 - 扶養控除38万円=136万円

 

195万円以下のため税率は5%となり、

所得税額=136 x 5% = 68,000円



配偶者の所得税

配偶者には給与所得がありますので、課税される可能性がありますが、

 

給与所得=収入金額 - 給与所得控除額= 8 x 12 - 65 (収入金額の40%より大きいため)=31万円

課税される所得金額=給与所得 - 基礎控除38万円 < 0

 

従ってゼロとなり結果として課税なしとなります。



消費税

簡略化のため売上は全額課税売上で毎年同額とします。またその他経費は全額課税仕入とします。

課税売上1500万円(1000万円以上) ゆえに課税事業者に該当

課税売上1500万円< 5000万円 ゆえに簡易課税の適用あり

 

原則課税の概算:1500 x 8% - (700 + 14 x 50%) x 8% = 634,400円

簡易課税の概算:1500 x 8% - 1500 x 70% (第3種事業) x 8% = 360,000円

 

なお簡易課税を選択するためには事前に選択届出書を提出しておく必要があります。後から有利だからといって選択することはできません。



個人住民税

均等割(一律5,000円)+所得割 = 5000 + 146,000 =151,000円

 

所得割=課税所得金額×10%-税額控除等 = 146 x 10%  =146,000円

課税所得金額=事業所得  - 青色申告特別控除 65万円 - 基礎控除33万円 - 扶養控除33万円= 277 -  65 - 33 - 33= 146万円(>35万円×(控除対象配偶者+扶養親族数+1)+21万円=35x2 + 21 = 91万円のため所得割あり)

※配偶者の住民税は非課税。給与所得31万円が住民税(所得割)の非課税限度額35万円を超えないためです



個人事業税

課税される所得金額=事業所得 - 事業主控除(一律290万円控除)=277 - 290 <0

従ってゼロとなり課税なしとなります。

※青色事業専従者給与控除の適用はあるので配偶者の給与控除額はそのまま

青色申告特別控除の適用は無い(65万円控除はできない)



税額の合計

以上より、税額の概算は、

所得税額  68,000円 + 消費税360,000円 + 住民税151,000円 = 579,000円

という感じです。

 

法人の場合

では法人成りした場合はどうでしょうか。

 

同じ事業で資本金200万円の合同会社を設立した場合に各税金がどう変わるか見ていきます。法人の場合、かかってくる税金は法人税、消費税、法人住民税、事業税です。また、役員である社長と配偶者の個人所得には、所得税、個人住民税がかかってきますので、全体として比較するためにこれらも合わせて見てみます。

 

法人税

益金=1500万円

損金=役員報酬(30+8)x12 + 家賃(法人契約とする) 10 x 12 + 車 14 + 他700=1290万円

 

したがって、

法人税額=所得金額x15.0%=(1500万 - 1290万) x 15.0% = 315,000円

※中小法人の軽減税率15.0%が適用されます



消費税

個人の場合と同じ内容となります。したがって、簡易課税を選択したとして、

簡易課税の概算:1500 x 8% - 1500 x 70% (第3種) x 8% = 360,000円



法人住民税

市民税と県民税の法人税割と均等割をそれぞれ合計で算出します。税額は千円未満切捨します。

 

法人税割=法人市民税(法人税額 315,000円x9.7%=30,000円) + 法人県民税(法人税額 315,000円x3.2%=10,000円= 40,000円

均等割=市民税5万+県民税2万=70,000円

 

したがって、

合計=法人税割+均等割=110,000円

 

 

事業税

資本金200万円ですので、所得割のみとなります。

 

所得割=所得金額x3.4%(400万円以下軽減税率)=210万x3.4% = 71,000円(千円未満切捨)



社長の所得税

役員報酬に対して所得税がかかります。

 

課税される所得金額=役員報酬30万x12 - 給与所得控除65万円 -  基礎控除38万円 - 配偶者控除38万円 - 扶養控除38万円 = 181万円

所得税額=181万x5%(195万円以下)=90,000円(千円未満切捨)



配偶者の所得税

配偶者も役員として、役員報酬に対して所得税がかかります。

給与所得=収入金額 - 給与所得控除額= 8 x 12 - 65 (収入金額の40%より大きいため)=31万円

 

したがって、

課税される所得金額=給与所得 - 基礎控除38万円 < 0 従ってゼロとなり課税なし

となります。



個人住民税

均等割(一律5,000円)+所得割 = 5,000 + 261,000 =266,000円

 

所得割の計算は次のとおり。

所得割=課税所得金額×10%-税額控除等 = 261 x 10%  =261,000円

課税される所得金額=給与所得 - 基礎控除33万円  -配偶者控除33万円 - 扶養控除33万円= 360 -  33 - 33 - 33= 261万円(>35万円×(控除対象配偶者+扶養親族数+1)+21万円=35x3 + 21 = 126万円のため所得割あり)

 

※配偶者の住民税は非課税です。給与所得31万円<住民税(所得割)の非課税限度額35万円のため



税額の合計

以上から法人成りした場合のトータルの税額の概算は次のような感じになります。

法人税額315,000円 + 消費税360,000円 + 法人住民税110,000円 + 事業税額71,000円 + 所得税額90,000円 + 個人住民税266,000円= 1,212,000円



まとめ

シミュレーションしてみて思うことは次のとおりかと思います。

  • 今回の事例の場合は法人成りの場合の税額(約121万円)が個人事業の場合の税額(約58万円)よりかなり大きくなりました。つまり税金だけ見れば個人のままが良いという話になります。
  • しかし、法人の方が社会的信用が大きいとか、資金繰りし易いといったメリットもあり、税金だけで片付けられない話でもあります。
  • ご覧のとおり税額計算はとても複雑です。もし個人事業か法人成りか迷ったら税理士等の専門家に頼んで具体的な事例でシミュレーションしてみることをお勧めします。費用はかかると思いますが、後で大損するよりは良いかと思います。

法人税所得税に気をとられがちですが、住民税や事業税もけっこうばかにならない金額なのでトータルで見ることが大事だと思った次第です。消費税の有利選択も非常に重要ですね。